【前編】「人に伝える力は、「人生の一貫性」と「芝居」によってもたらされる!」はこちら
【中編】「イタリアという環境がアーティストとしての感性を高めてくれる!」はこちら
あきら あいちゃんは、イタリアに何もない状態から、2年2カ月で教会で歌う仕事を獲ったって聞きました。すごいね。
相川 4万人が入るイベントに出演させてもらっています。大盛り上がりです。
イタリア中で4万人が来場する「フェスティバルオリエンテ」に出演の様子
あきら 実際に行って、どのようにしてステップを踏んでいったのかを聞いていきたいんだけど。
相川 営業は、人と会ってなんぼです。ご覧のとおり口コミを生む格好をして、他との差別化を図ります。
あきら それはやはり先程言っていた、違いを出していくということですか。
相川 圧倒的な違いをですね。
あきら その圧倒的な違いというのは、具体的に何なんだろう?
相川 それは刀と和服で、頭は金髪です。
あきら まさに今している格好だね。それは反応がよかったのですか?
相川 掴みはこれでいけます。そして、次に自分の深いところ、格好だけじゃないところを見せて惹きつけます。
あきら なぜそういうふうに見せていくのが相手にとって印象に残るし、インパクトがあるという結論になったの?
相川 日本での経験です。日本で、ニッチなところを取っていく戦略の強さを知ったので、実践しているだけです。イタリア人の髪の色は割と、栗色がデフォルトなので、イタリアでも金は目立ちます。
あきら 実際に以前ヴィーコエクエンセを港まで一緒に歩いたら、3グループぐらいから「写真を撮るから、一緒に入って欲しい」と言われましたよね。あのようなことが毎日あるのですか?
イタリアを一緒に歩くと必ず写真を撮られるあいちゃん
相川 そうです。あのようにしていれば、仕事が取れます。結局みんな気になるのです。なぜこのような人が、これでここにいるの、そう思わない人は1人もいないのです。必ず聞かれるので、深い意味のあることを言うのです。
あきら 深い意味あることを言うんだ。その深いことは、どうして大事なの?
相川 格好だけの見掛け倒しなら誰も魅了されません。例えば、「バカンスで来ています」、「学生で来ています」と言って仕事が来ると思いますか。「バカンスで来てるの?じゃあ日本に帰るんですね。」「学生で来てんだ。じゃあ勉強中なんだね」「じゃあ大したこと出来ないんだね、上手になったらまた会いましょう」って言われます。
あきら 深いことというのは、仕事でボイスアーティストとして、イタリアに勝負しにきたという話ってことなんだね。
相川 そうです。「私はアーティストでこういう表現をしています。こういうプロフェッショナルです。」と伝えます。
あきら 格好するにしても、中身がないといけないと。
相川 そうです。中身が大事です。
あきら そういうふうに目立って、「なぜ来たのか」とか、深い話をしていくと、それなら実際に歌ってほしいというオファーに繋がったりするだね。
相川 彼らは第1印象でまずどんなやつか探りを入れてきます。そして。実際にパフォーマンスを見ないと、いいか悪いか言いません。パフォーマンスを見せて、客がどのような反応をしたのかを見て、金を払うか決める人達なのです。
あきら なるほど、それをステージで繰り返していったということか。
相川 そういうことです。どこでも歌ってきました。
あきら そしてデビューの時は誰かイベンターや主催者側が見てたという感じですか?
相川 そうです。今はレギュラーで出る所があって、そこも最初は「試しで1回歌ってもらおうか」と言われて、歌ったら、お客さんが感激して、「逸材を見つけた」と言われました。それからギャラの交渉です。
あきら イタリアでギャラというのは1ステージ、どれぐらいもらえるものなの?
相川 ものによりますが、デビューライブの時が1時間半のライブで500ユーロでした。
あきら 500ユーロということは、7万円ですかね。
相川 1時間半で500で1ステージなので500ぐらいです。7万5千円です。
あきら それはギャラとしては高いものなの?
相川 イタリアでは高いです。日本では普通です。
あきら それが、イタリアでお金をもらう仕事に発展していったんだね。
相川 そのために行ったので、仕事を作るというのはそういうことです。
あきら おそらく最初行った頃は、日本の稼ぎを持っていくという感じだったよね。
相川 なんとか2年間それで食いつなぎました。
あきら 2年間!でも、イタリア・ユーロは外貨が高いので日本で稼いだ分だと、その2年間は苦しかったんじゃない?
相川 何を持って苦しいというかによります。単純に考えると、海外生活は大変ですが、イタリアは楽しい所です。海外生活は、それは大変です。全部違うのですから。けれども、美しい海があって歌があります。食事は本当に美味しいし、食費も安いです。美しい景色も見ることができます。
ロンドンやベネチアやミラノ、またローマにしても新規開拓をしていくわけなのです。なんの手がかりも無かったことも何回もありました。それでもその中から仕事が上がってきますから、大変なことはありますがチャレンジします。テイク・ア・リスクです。
あきら 外貨が入ってくるのは、とても楽しそうだなと感じます。
相川 日本で10年だけですが独立起業して仕事し、その後にイタリアを開拓していて思うのは、条件がそろわない限りは日本だけで商売した方が儲かるということです。
イタリア人に比べると、日本人のモラリティは世界随一なのでほぼ約束を守ってくれるので。しかし、日本の国益を考えると、国内需要に答えて儲かるだけをやっていては未来がありません。大変でも、誰かが外に出て名をあげるべきだと思っています。
あきら でもだからこそ、そういう厳しい環境の中で、どんどんチャンスをつかんでいっているというのは、すごいよね。最後に、日本からアーティストとしてイタリア、ヨーロッパに挑戦する人がいた時に、こういうことを大事にしていきなさいというのは何かありますか?
相川 大変だからやらないほうがいいです。
あきら やらないほうがいいですか(笑)
相川 大変なので、やらないほうがいいです。
あきら 相当大変なんだね。じゃあそれでも、やりたいんです。夢なんですと言う人がいたら、どのように言いますか?
相川 取り合えず金を貯めたらいいのではないですか。
あきら お金を貯めてから行けということだね。
相川 金を貯めたほうがいいと思います。そして、自分の能力を伸ばしてください。日本にいる間に工夫できない人が、向こうに行って工夫できるわけがありません。日本にいる時点で「おっ」と言われるものが無ければ、行っても勝負にならないです。
あきら 日本である程度ビジネスやどのように仕事をとるのか、人は何にインパクトを感じるのはというものを学ぶことがまず大事だってことだね。経験によってそれが分かると、その国で勝負するってなったときにその視点をもって戦略を練ることができるようになる。ぼくはそういうことが大事だなってあいちゃんを見てて思ったね。
中村あきら×相川陽介対談終わり
(構成・編集 湯ノ口直樹)
【前編】「人に伝える力は、「人生の一貫性」と「芝居」によってもたらされる!」はこちら
【中編】「イタリアという環境がアーティストとしての感性を高めてくれる!」はこちら
あいちゃんとの対談で、わかったことは口コミを生む格好をして、本物の技術を見せていけばどんどん人の認知度は広まっていくということだ。
これはアーティスト、パフォーマーにだけでなく経営者や起業家にも言えるだろう。
あなたがもし、本物の技術を持っていたら口コミを生む格好をしてみてはいかがだろうか。
それだけでまったく仕事の広がりは変わってくるはずだ。
自分の「魅せ方」と「技術」、どちらも鍛えていかなければ遠くにはいけない。
でもどちらも鍛えていけば、日本だけじゃなく海外だって戦えるんだってことをあいちゃんは教えてくれた。
ぜひあなたの「魅せ方」と「技術」を世界レベルまで持っていこう!