こんなに違う!日本とシリコンバレーの雇用法の違い!

10月16日シリコンバレーのパロアルトにある会場で行われたスタートアップセミナーに参加してきました。
テーマは、アメリカ・カリフォルニア州の雇用法セミナーです。

主催は、SVJEN(Silicon Valley Japanese Entrepreneur Network)というNPOでした。
SVJNは10年ほど前に設立され、その当時日本からシリコンバレーに進出してくる会社同士の横のつながりがまったくありませんでした。

みんな同じ場所で失敗してつまづいていたそうです。
そこでその横のつながりをつくり、失敗や成功を共有する目的で作られたそうです。

今日の講師は、山本与志人 弁護士でした。
シリコンバレーでは様々な事例や失敗例を見てきている方です。

山本与志人 (やまもと よしと)弁護士 セミナー

今日のテーマは、「カリフォルニア州の雇用法」

こっちに進出してきて、多くの日本人は現地の人を雇うということに対しては恐怖心があり、
結局日本からの社員や、日本人を雇うというパターンが多いのだとか。

この「恐怖」というのは、法律の違いはもちろん、
働く人たちの権利意識、労働環境への意識の違いが大きすぎることに対する恐怖、です。

また日本人だけを雇うと決めていても、現地の恋人が、アメリカの法律・慣習からみておかしい、
と言って告訴されたというのは数多くあるそうです。

日本の法律とあまりに違い過ぎて、いったい何が待ち受けているのかわからない、訴訟社会のアメリカで「訴訟なんて」という点が、現地採用を躊躇させているわけです。

しかし、山本弁護士曰く、
「現地の優秀な人材を雇わずして、シリコンバレー進出の目的は達成できないのでは」
というのは、たしかに納得でした。

今日のセミナーでは、アメリカ・カリフォルニアの雇用まわりの法律の違いについて学んで行きました。

スタンフォード大学横の講演会場スタンフォード大学横の講演会場

①At-will employment(任意雇用)

よくシリコンバレーはじめアメリカでは、日本とは違い自己責任の国だから社員はすぐ解雇できるという話を聞きます。
実際にはどうなのでしょうか。

こちらはAt-will employment(任意雇用)という制度というか概念、があります。
これはアメリカで最も一般的な雇用契約の形態で、文字通り「Will(意志)」による雇用です。

雇用主と従業員が両方の意志によって成り立ちます。それはつまり、何らかの契約がない限り、何時もいかなる時も解雇していいし、辞職していいというものです。

しかし、人種や性別や出身国・宗教・性志向・年齢・身体障害などの理由によって解雇してはだめです。
そして解雇するときは、必ず解雇理由を説明するというのを忘れてはいけません。
(説明の義務があると言うよりも、説明することで後の訴訟リスクを無くすためにです)

「For Cause」(何らかの理由による解雇)なのか
「LayOff」(人員削減による解雇)なのか説明してあげることです。

そうしないと失業給付金などを受けれられるのか心配するからだそうです。

日本は一か月前通知や正当な理由がないと解雇していけないのに対して、シリコンバレーのすぐにでも解雇していいのは、会社にとってとても都合が良い制度に見えるかもしれません。

しかし、このAt-will employment(任意雇用)は働く人にとってもメリットがあります。
つまりいつやめてもいいのです。

日本のように、引き継ぎ期間を設けたりする必要はありません。
辞めたいと思った瞬間その日のうちに会社を辞めてもいいのです。

②Agreement(雇用契約書)

日本では、定型的な雇用契約書を結び、契約書を結んだあと自分がどんな仕事をするのか、どこに配属されるのかが決まるケースが多いです。

しかしアメリカでは、雇用契約の段階でそれを明確化しないといけません
契約期間はいつまでなのか、どんな仕事をやってもらうのか、仕事のフローはどんな流れなのか、どんな権限をもっているのか、あなたのボスは誰なのか。それを契約する前に決めなければいけません。

人種が多いアメリカ、宗教など信仰の多いアメリカ、様々な国の文化背景が多いアメリカでは
日本のように「ここまで言わないでもわかるでしょう」は通用しないということでした。

例えば、雇用契約書にどんな権限があるか(顧客への販売売価、値引き、納期など)を明記しなかったために
めちゃくちゃ安い価格で販売して会社に大損害を与えたというケースもあるほどです。

優秀な人材を獲得したあと、維持するためには雇用契約は必ず結びましょうとのことでした。

日本では、有給休暇は1年間で使用しなかった分などは、「5日間を上限に」などの項目で消せることができます。
しかしシリコンバレーでは、一度付与した有給休暇は会社側で消すことはできません。

なので放っておくと、何年も勤務した人が退社時に一気に有給休暇分の給与を請求されるなどということがあります。

こっちでのやり方は、使わなかったVacation(有給休暇)は年度末に買い取るというのが多く、
一定時間分の有給が溜まると、それ以上付与しないという制度をしていることろもあるそうです。

④Health Imasurance(健康保険)

こちらの健康保険は、日本と比較して非常に高額だそうです。
一人、300ドル~1000ドルぐらいで、会社が50%、75%を負担して家族の分も同等かそれ以下で支払うケースが多いとのことでした。

また、医療保険・歯科保健と種類が多いのも特徴です。
シリコンバレーで人を雇う場合、健康保険をちゃんと予算として計算していないと雇った後大きな費用がかかって大変らしいのでぜひ知っておくべきだそうです。

⑤Retirement Plan(退職金)

日本では退職をするときに、退職金が支払われることがありますが
シリコンバレーでは退職金という制度・概念というものがありません。

会社が厚生年金を提供するということはほとんどありません。
その分、日本とは違い毎月の給与から積み立て分が差し引かれるということもありません。

こちらでは、401kプラン(確定拠出年金)がもっとも一般的です。
日本でも、導入している会社が増えているみたいですが、これは何かと言うと。

会社の退職金を、退職時に会社が耳をそろえて支払うのではなく、毎月あなたの401k口座に入金するので退職時まで自分で運用してください、というものです。

これは日本の退職制度よりもコストが多くかかります。会社がプランを計画しないといけません。
しかし、このプランなしでは、ほとんど人が入ってこないそうです。

⑥Stock Option(ストックオプション)

日本でもストックオプションを取り入れた会社はありますが、こっちシリコンバレーではSrockOption制度はほぼすべての会社にあります。

これが従業員の退職金の源泉となることが多いのです。

ストックオプションはないと他の報酬で補わないといけません。
しかし、このストックオプション会社がうまくいけば何百万ドルというお金が退職時に入ってくる可能性がありるため、これを補うのはよほどのことで補わなければいけません。

給与が半分でも、将来的に何百万ドル報酬が入る可能性があるストックオプションがある会社を選ぶことはよくあります。

会社でもしストックオプション制度をやる場合、実際に株をあげるのか、オプション(株を買う権利)をあげるのか。
そういったことも考える必要があるようです。

講演会終了の風景
あきらの考察:いかに日本の優秀な弁護士が世界に進出するかがこれからの日本のカギ!

このセミナーを聞いていて、もしシリコンバレーで現地の人を雇う場合
いかに良い弁護士(もしくは法律家)と出会えるかがカギではないかと思いました。

参加した方々からヒアリングした結果、日本の弁護士が弱いという意見が多かったです。
例えば、インドなどの弁護士はとても優秀で法律のすきま抜いていき、交渉がうまいらしいのです。

なのでインドは、シリコンバレー進出がとてもうまくいっているということでした。

今日はとても勉強になりました。
文化や国が違うとここまで働くルールが違うのかというのを学ばせて頂きました。

ぜひ日本の優秀な弁護士さん、特にゲリラ戦で強い弁護士さん、ぜひシリコンバレーに進出してください。
そうすることで日本は世界への進出がグッと近づくのではないかと感じました。

 

 

 

 



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