ハーバードビジネススクール(HBS)では、卒業のシーズンを迎える学期末の最後の授業では、教授が特別なレクチャーをするという伝統がある。
その授業では、自身の経歴や過去の過ち、そこからのレッスン、そしてハーバードから羽ばたく将来の世界のリーダー達に対する熱いメッセージを伝える。

今回は、現在はグロービス・キャピタル・パートナーズで投資家をつとめる湯浅・エムレ・秀和さんの日記からその授業の一部を紹介したい。
ぼくは敬意をこめて、このハーバードの教授を「アゲメン」教授と呼ぶことにする。
リーダーシップと組織学の「アゲメン」教授
今回紹介するハーバードの「アゲメン」教授は、リーダーシップと組織学を教えている。

リーダーシップと組織行動学の授業は、私の印象に残っている授業のひとつだ。そこでは1学期を通じて「キワどい」判断が迫られる。
たとえば、途上国の発展に貢献したいと、事業をしている人のケース。現地政府の高官から賄賂を要求された場合に、「大事の前の小事」と割り切って応じるのか、それとも悪事は悪事と、きっぱり拒否すべきか。こうした、正しい答えのないケースがこの授業では次々と取り上げられ、私を含む生徒たちはその都度、激しく議論した。
「アゲメン」教授の普段の授業では、世界の問題に直面した場合の判断をどのようにすればいいのかという議論を行っている。
そんな「アゲメン」教授の最後の授業で、教授は自らの人生の葛藤について語りだした。
「若かった頃、私は大学で、妻は大企業で仕事をしていた。妻は職場を気に入っており、毎日仕事を楽しんでいた。一方、私のほうは研究に行き詰まっており、将来に不安を感じていた。そんなとき、地方の大学から准教授としてのオファーがあり、キャリアアップのため引っ越すことにした。
私のキャリアは好転し、若くしてテニュア(終身地位保証)を手に入れられそうだった。しかし、その大学はものすごい田舎町にあり、その町で妻の転職先を見つけることはできなかった。妻のキャリアは完全にストップし、あり余るエネルギーのやり場がなく毎日不完全燃焼していた。しだいにケンカが絶えなくなり、家庭は癒やしの場ではなくなった。

「アゲメン」教授は、自分のキャリアのため引越しをした。
当初はもちろん、その選択が家族のためであり、自分のためになることだと信じたはずだ。
しかし、家庭の様子を見たときに、どうも違うぞと思ってきたのだ。
「ある日、私はふと思った。私は何を大切にして生きてきたのだろうか。自分のキャリアがどんなにうまくいっていても、家庭がうまくいっていなかったら幸せはありえない。私は妻の生涯の伴侶であるにもかかわらず、彼女の人生を大切に考えただろうか。
結局、テニュアが近かったにもかかわらず、大学を辞めてボストンに引っ越すことにした。妻は職を見つけ、キャリアを再スタートさせることができた。家庭は再び活力の源となった。しばらくして、私はHBSからオファーをもらい、今は准教授としてあなたたちを教えている。まだテニュアには遠いけど、それでもかけがえのない幸せな家庭を手にしている。ボストンへの引っ越しは人生最良の判断だった」
世界のリーダーの卵にリーダーシップを教える「アゲメン」教授は、自身の経験から自分の人生だけではなく、妻の人生を考えることの大切さに気づいたのだ。
それが回りまわって、自分の幸せへと帰ってくる。
ビジネスの面では成功している人でも、プライベートはめちゃめちゃという人は意外と多い。配偶者と離婚していたり、子供と疎遠になっていたり、心から信頼できる親友がいなかったり、自分の存在意義を感じられなかったりして、表面では成功していても内面は不幸せな人はいる。
それは、自分を優先しすぎてしまったからかもしれない。自分の夢とパートナー(配偶者)の夢が両立できない場面は必ずある。そういうときは、相手からもらうことではなく、相手に与えることを優先するべきなのかもしれない。

最後に「アゲメン」教授は、自分の伝えたかったことのエッセンスを一言で語った。
「Honor the dream of your partner (パートナーの夢を尊重しなさい)」
ハーバードの「アゲメン」教授は、パートナーの夢を尊重しなさいと言ってくれた。
自分のキャリアだけを優先し夢が叶ったとしても、パートナーの人生やキャリアが止まってしまったら、自分たちの夢を支える家庭が不幸せなものへと変わってしまう。
パートナーの夢を尊重しよう!
そうすることであなたはもっと羽ばたいていくことができるはずだ。
あなたのパートナーの夢は何ですか?
この記事が載ってある「まとめ記事」はこちら

→【完全まとめ】パートナーを成功させる!あなたもあげまんになれる!「parcy’s note」必読記事
