『コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと』川上量生著を読んだ。
この本の一番の特徴は、ドワンゴの創業者であり「ニコニコ動画」などをつくってきた経営者がジブリというもの、そしてジブリで何を感じたのかをまとめたということだ。
その中でもぼくが特に面白いと思ったのは、川上さんと鈴木俊夫プロデューサーとのやりとりだ。
鈴木さんの哲学が断言されていてとても面白い。
人間は高そうなものにしか、お金を払わない
この鈴木さんの断言がすごい!
大作主義と高そうなカット
あるとき、鈴木敏夫プロデューサーが『かぐや姫の物語』の予告編をどうやってつくればいいか、西村義明プロデューサーにアドバイスしていたのですが、そのとき鈴木さんは、「予告編は高そうなカットをつないでつくればいい」と教えていたのです。
ぼくがびっくりして、「高そうなとカット、ですか。すごい表現ですね」と言ったところ、「これ、外では言ってないんだよねえ」と、鈴木さんは悪戯っぽい笑顔を見せたんです。
「人間高そうなものが好きだから」
人間は高そうなものにしかお金を払おうとしないと、鈴木さんは断言したのです。
——『コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと』川上量生著~大作主義と高そうなカットより
ビジネスをやっていると、本当にそう思う。
高そうなものしか人はお金を払ってくれない。
だからこそ、デザインや見た目に時間とお金をかけることはすごく大事だ。
話のつじつまなんて合ってなくていい
この鈴木さんの断言がすごい!
クリエーターはどこで勝負するのか
映画を見て、話しのつじつまが合わないと文句を言う人がよくいるけれど、話のつじつまなんか合ってなくたっていいんだそうです。
「観客は映画のなにを見ているのか?という問題なんですよ」
と鈴木さん。
ぼくは話のつじつまが合ってない映画は嫌いで、ストーリーがおもしろいほうがいいと思うのです。そう主張すると鈴木さんは、「川上さんみたいな見方をする人は少数派なんですよ」と返します。
(中略)
「本当に凄い映画を見たときは、観客はストーリーなんて気にしない」とも言います。
よく、ストーリーのつじつまが合ってないことにケチをつける人がいるけど、問題なのはつじつまが合ってないことではなく、映画が面白くなかったことなんだそうです。
だからこそ、つじつまが合わないことが気になる。
そう鈴木さんは断言しました。
——『コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと』川上量生著~クリエーターはどこで勝負するのかより
グサっときた一言。
細かいところを気にするのではなく、全体がすごければ細かいところなんて誰も気にしない。と思わせてくれた言葉だ。
いかにして人間の本能に訴えかけるか
出典: matome.naver.jp/
この鈴木さんの断言がすごい!
『トトロ』がヒットした本当の理由
鈴木敏夫さんが以前、こんなことを話してくれたことがあります。
「なぜ『となりのトトロ』がヒットしたのか。昭和の原風景だとか、現代人の自然に対する回帰の欲望だとか、いろいろ難しいことを言う人はたくさんいる。
でもそれは全部的外れだと思う。
トトロが人気になったのは、トトロのお腹がフワフワしてて、なんだか触るとへこんだりして気持ちよさそうだったからというのが本当の理由に決まっているでしょう。」
宮崎駿さんのなにがすごいかと言うと、そういう人間の生理的な感覚をコンテンツとして再現できてしまうところです。映像をとおして人間の本能に訴えかけてくるのです。
——『コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと』川上量生著~クリエーターはどこで勝負するのかより
ネットショップでものを売っていても、結局のところ売れるのは、人間の本能に訴えかけたものだった。
女性に対してモテるもの、かっこよくなるもの、きれいになりたい、かわいくなりたい。
そんな欲求や人間が感じる純粋な本能に対していかにアプローチできるか。
それができないとビジネスもうまくいかないのだと経験した。
もっともっと人間の本能に訴えかけるビジネスを創造していきたい。