【後編】月夜野工房インタビュー「人と人が寄り添って生きることをビールグラスに託す」

月夜野工房取締役・4代目倉田弘樹

1905(明治38)年、創業者・倉田昌三氏によって設立した「月夜野工房」。体温計から街頭照明、花瓶、食器、アートまで創業から110年間ガラス一筋で日本の歴史と共に歩んできた。今日はそんな月夜野工房・現取締役4代目倉田弘樹さんに月夜野工房の歴史・ガラス職人への想い、ビールグラスができるまでのストーリーを語ってもらった。
【前編】「体温計からアートまで。110年の歴史と共に日本をガラスで照らしてきた」はこちら
【中編】「次の時代に繋ぐためにも、多くのガラス技法を取り入れる」はこちら

あきら 最後に、今度紹介するビールグラス「夕焼けのやま」と「ホタル」について聞きたいのですが。あれはどのようにして出来たのですか?

チェコの姉妹都市になったのをきっかけ地ビール造りが始まる

月夜野工房の夕焼けのやまビールグラス「夕焼けのやま」

倉田 元々当社はガラスのメーカーで、自社のブランドやOEMなど、ガラス製品を作る工場だったのです。チェコもボヘミアンガラスがある、世界的にガラスの産地で、ひとつのブランドを持っている所です。
チェコのデザイナーさんのデザインしたものを、日本のガラス工場で作って日本の市場で売ろうということを30年ぐらい前に始めたのです。とある問屋さんの企画で始めていく中で、そのデザイナーと意気投合し、仕事は仕事でくるけれども、プライベートでも仲良くしてという中、彼がチェコ出身で、彼の地元の町が「国際姉妹都市を探している。どこか無いかね」という時に、彼のほうから「日本の群馬県という所に山奥でガラスを作っている町がある。景色がこことそっくりで、初めて新幹線を降りて町に降りた時に、チェコかと思った」と言っていたのです。
そういうご縁で、チェコのウェルスキーブロットという町と姉妹都市になったのです。

チェコのウェルスキーブロット姉妹都市になったチェコのウェルスキーブロット

あきら 姉妹都市ってそういう風に生まれるんですね。意外です(笑)

倉田 その時に今で言う地域活性化のような動きが、20年ぐらい前にこの月夜野という群馬県北部を盛り上げる、観光として誘致していくためのディスカッション会がありました。ちょうど自ビールの規制緩和もあったので「じゃあガラス工場で自ビールでもしようか」ということを言ってたのがトントン拍子に話が進んで「じゃあ地ビールしましょう」と。
チェコとも姉妹都市だから、チェコはピルスナービールの発祥の地だからビール作りでちょうどいい。チェコと姉妹都市だから自ビールでしょという大義名分ではないけれども、あったのがビールを作るきっかけです。

月夜野工房の地ビール月夜野工房の地ビール

あきら 自分たちでビールも作っているんですね。

倉田 はい。それでビールを作った時にグラスを作らなければいけない。ガラス屋がする自ビールレストランで、どこにでもある市販のジョッキを使ったら恥ずかしいよねというのがひとつ。ヨーロッパとかアメリカのビール、クラフトビールは、メーカーごとに自分たちのグラスを持っているので、それで飲むというスタイルが定着している。じゃあうちも、せっかくガラス屋なのだから、ジョッキを銘柄ごとに作ろうよということで、ピルスナーには夕焼けの山。当時の月夜の町は、ホタルで結構有名になったので、黒ビールにホタルが飛んでいたら、ホタルっぽく見えるよねということで、ホタルというグラスを他の銘柄と一緒にバイゼン、エール、4種類用で作りました。

月夜野工房のホタル月夜野工房のビールグラス「ホタル」

当時、自ビールレストラン、自ビール工房がたくさん出来たけれども、みんなコップは一緒でロゴだけ違うコップで飲んでいたところ、グラスまで違うというのは、取り上げが多かった。
当時は非売品でレストラン専用だったのですが、あまりにもおしいという声が多かったので一般販売をして今に至るという経緯です。だから、ガラス屋だからビールコップ作りましたという、途中が長いのです。ガラスで食器作っているのだから、ビールもお酒もウイスキーもワインも、当然ガラスのコップであるよねという話ではなく、そういう紆余曲折があって、山のグラスとホタルのグラスが生まれているのです。

あきら あれはいいですよね。ビールを注いだら夕焼けみたいになって、黒ビールを注いだらホタルみたいになる。誰かと話をしていても話題になりそうだし、話が弾みそうです。

月夜野工房夕焼けのやま月夜野工房のビールグラス「夕焼けのやま」

倉田 デザインをした室伸一(むろ・しんいち)というデザイナーが常々言っているのですが、中の素材が見える素材というのはガラスだけなのです。普通、食器というと金属か陶器か磁器か木は何か見えない。だからどうしても、表面の色でしか表現できない。けれどもガラスは、中身の色とガラスの厚みの色と外の色で、三色の景色を作れるというのを常々言っている。ビールのグラスを作ろうと言った時に、ドンピシャリ。
元々、室伸一は山というデザインで、あのような形の物を作っていました。昔から、ビールを入れれば夕焼けのように見えると思っていたところ、ビールコップ作ろう、これしかないという形でグラスが生まれているのです。ピルスナー、エール、バイゼン、黒、4つのビールに全部テーマを付けて。今でもビールはそういうテーマを付けて、銘柄を選んでいるので、それに対して合う器というふうに考えていくと、必然的にあのようなデザインになっていくというのもあると思います。

夕焼けのやまの制作過程

あきら 下の山の部分は、男性と女性のパートナーシップだと聞いたのですが。

倉田 元々あのグラスを作った時、やはり山奥に工場があるので「どこかの山がテーマなんですか」と聞かれることが多かったのです。結局室伸一のこだわりというか、デザインがテーマなのです。どこの山でもなくて皆さんの心の中にある懐かしい山の景色ですよ、というのが根底にある。「なぜ峰が2個なの?」「富士山でいいじゃない」「富士山でしょ?」という質問が多かったのですが「富士山ではなくて、みんなの山だよ」というのがひとつ。2つ峰があるのが室伸一のこだわりというか、デザインのコンセプト。人は1人では生きられない。必ず親とか兄弟とか仲間とか彼女、彼氏、奥さん、旦那さん、そういう、人と人が寄り添わないと人は生きていけないんだよ、という事を山が峰に託しているというのは、デザインにはあります。

あきら 人という意味もあるということですね。

月夜野工房の倉田弘樹さん

倉田 お酒飲む時は、もちろん1人で飲む時のほうがいい時もありますが、仲間とワイワイ飲むお酒のほうがおいしいですし、そういう器がきっかけになって、さらにトークが弾み、盛り上がるのならまた、それはいい事です。やはり食器は、広い意味で食事を引き立たせるものでもあるし、よりおいしくさせるための道具だと思います。

あきら プレゼントとかにも大変喜ばれるんじゃないかなと思いました。

倉田 やはり、父の日が1番動くし、贈り物にという声は大きいです。今の時代では、他人に上げるプレゼントもそうですが、頑張った自分へのご褒美でもあるようです。ここ2、3年クラフトビールブームというのも、大きい追い風になっていると思います。

あきら 少し、通なお酒飲みの人や先輩の経営者さんなど、父の日もそうですが、ちょっと目上の男性へのプレゼントとかにも、大変いいのではないかなとぼくは感じましたね。

倉田 物としても、いろいろな思いが詰まっています。コップという、飲み物を飲むという形状と機能だけではないものは、たくさん持っていると思います。

あきら 分かりました。今日はありがとうございました。

月夜野工房取締役・4代目倉田弘樹

月夜野工房・取締役4代目倉田弘樹さんインタビュー 終わり

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中村 あきら

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